「全日本プロレス中継」風文字を書いてみる

全日本プロレス文字、全日本プロレス中継フォント

レトロな雰囲気の「全日本プロレス中継(80年代)風文字」をIllustratorのアートブラシを使って情緒豊かに書いてみました。

オーダー品をココナラで販売しています。

「全日本プロレス中継」の「テロップ」を再現したい!

はじめに

この記事を参考にさせていただきました。

※その他本記事に使用している写真は全て「全日本プロレス 文字」でGoogle検索から拾ったものです。問題あればご連絡ください。

昔のテレビ番組は

昔のテロップ
胡散臭さ満点の昭和のテレビ画面

40代以上の人しか分からない話ですが、昔(1980年代)のテレビ放送のテロップ(文字情報)はパソコンやCGで作られたカチッとしたフォント文字ではなく、手書きのレタリング文字が多用されていました。番組の雰囲気に合わせ「かっこいい感じ」「可愛らしい感じ」「怖そうな感じ」を伝えるデザイン文字を専門の職人さんが書いて、専用の機械(テロップ)で投影していたようです。

全日本プロレス文字のテロップ
独特のブロック感とスピード感のあるレタリング。名前がもう全員かっこいいよね。
全日本プロレス中継のテロップ
テロップ原本。数年前にネットに上がった画像とのことで、このようなものが大量にオークションに出回っていたらしい。欲しい。

全日本プロレス中継」はその名の通りプロレス番組で、件のデザイン文字を使った対戦カードが試合前に差し込まれて試合の雰囲気を盛り上げてくれたのです。

このフォントを入手できないか?というところから色々と検索してみました。

既成のフォントで…?

※イメージです

同じようなフォントを作っている人がいた

検索してみると冒頭のサイトの他にも自らフォントを作ったっぽい人がいましたが

何年か前にもtwitter上でこんな文字があったらという話が出てたらしい

見た感じ、再現度がいまいち(すいません…)な気がしたのと、セット化された「フォント」だと同じ文字が並んだ時も全く同じ形になってしまい手書きの雰囲気が表現できてないような。

全日本プロレス中継のテロップ
再び本物のテロップ。「フ」や「ン」や「ク」などが繰り返し出てくるが
一つとして同じ形の文字は無い

フォントではなく、レタリングで再現するしか

この文字の1番のポイントは「2度と同じ文字がない」こと。プロレスラーっぽい名称を再現しようとすると「ブルーザー・ブロディ対ディック・ザ・ブルーザー」的な表記(この二人接点はなかったような)も手書き感あふれるガタガタな雰囲気がないと全然面白くないので!

結局自分で作ってみることにしました。

「フォントじゃダメだ。レタリングだ」でもどうやって書く?

レタリングのイメージ
※イメージ

特徴ある文字だが

全日本プロレス中継のテロップ
微妙にシアー(斜体)がかかった感じとスピード感のある払い、
60度くらいでカクッと折れ曲がった右肩が特徴だ。

まずは原本の筆跡を分析。斜め気味に寝かせた平筆でスタートして角(右肩)で筆の角度を変えつつ屈曲、最後の払いは勢いをつけたかあるいは意図的に筆先が割れるような細工がしてあったのだろうか?一発書きではなくて細かなヒゲは後で足してる?このバッサリとした払いを毛筆だけで作るのは難しい気もするので…何回か紙焼きして泣かせた?など色々推測はできました。

あとこれは私の想像ですが、このテロップを書いていた人は一人ではなかった気がします。パッと見の規則性は似ているようで仕上がり的には全く別物なものも。

全日本プロレス中継のテロップの筆跡を見比べる
どう見てもこの2つは別人が書いているような。
「ブラックジャック・ランザ」のように長い名前は書いた後に変倍かけたのがわかるがそれにしても違いすぎ。

細かな違いはあれど、放送されたら同じに見えたのかな…。とりあえずこれらの平均を取った形でデザインして行くことにしました。でもどうやって作ろうか。

既存のネット画像からパスを抽出、一文字づつ拾って保存

初めに考えたのはこれ。見て書くより早いよね。幸いネット画像色々な対戦カードが残っていて何パターンか拾えそうだったので試しに色々と文字を組んでみました。

全日本プロレス中継のテロップを見て作ってみた
こんな感じでスキャンした画像からパスを拾っていった。無い文字は要素をつなぎ合わせて作字。

「フ」や「ン」など数種類の文字を色々織り交ぜて「これは簡単に再現できる!」と思ったのですがここで一つ問題が。

無い文字が多い&漢字問題

プロレスラーの名前は何故か偏りがあって「ア行」や「カ行」なんかいっぱいあるけど「ヤ行」とか全然ないです。そして漢字に至っては昔は漢字フルネームのレスラーがあまりいなくて、拾える文字が少なすぎる!漢字は全て作字になるのか?!これは結構無理があることに気づき始めました。

全日本プロレス中継のテロップから拾ったデータ
手元にある漢字入りの要素はこれだけ。使用できる精度のものに至っては左の4人のみ。
本名名乗れや。

画数の多い漢字や平仮名など、未知の文字をいちいちアンカーポイントを切り貼りして作字していくのは結構難しい…いや書けないことはないけど、早く美しく書くのにはこのやり方はやはり不向きです。ではどうやって?!

筆ペンで書いてスキャンする?

筆ペンのイメージ
※イメージです。

次に考えたのは、筆ペンでガチの手書き。筆跡のクセは画像から理解できるので漢字は必要に応じて書いていくか…。でもこれってかなり重労働じゃないか?!自然な風合いを再現するために数パターン書いて全部取り込む?う〜ん、意外と大変かも。40歳以上のオタクなプロレスを熱狂的に見て育った稀有な人たち以外には何の思い入れもないこの文字を再現するのに、そこまで労力をかける必要があるのだろうか?と書いてて自分でも嫌になってきましたが。

Illustratorのアートブラシを使うぞ

アートブラシのイメージ
Bitly

アートブラシとは

そこで思いついたのがIllustratorの「アートブラシ」を使うやり方。パスに沿ってパターンやら毛筆っぽいものやら色々描画してくれる便利な機能です。

ai.のアートブラシ
プリセットのアートブラシの使用例。これだけでも結構色々書ける。

アートブラシを作成!

ここに先のスキャンした要素を取り込んで、何とかパスの連続だけで描画できないだろうか?早速セットを組んでみました。こんな風にギザギザした要素だけを拾って…

アートブラシを使って全日本プロレス中継文字を作る
ウォリアーズが私を助けてくれた
アートブラシを使って全日本プロレス中継文字を作る
ブラシにドラッグ(細かいやり方は割愛します)

「アートブラシ」として命を吹き込んだ!

とりあえずこれくらいの要素をアートブラシとして登録。

アートブラシを使って全日本プロレス中継文字を作る
現在はもう少し本数を増やしている(濁点などは結局アウトラインのまま使用)

こうして「パスだけで」描画できる「全日本プロレス中継文字」が完成したのです!

アートブラシを使って作った全日本プロレス中継文字
全てを公開することは出来ないがこんな風になっている。あくまでもパスだけだ!

カタカナの再現性はもちろん、難しい漢字も平仮名もパスの曲げ方を調整して何度でも書き直せます。「アートブラシ」は伸長すると要素も連動してついてきてくれるので「払い」を長くしたり短くしたりして手書き感も表現できます。

「パターンブラシ」ではいまいち

ちなみに、角の設定もできる「パターンブラシ」でも試みましたが再現度がいまいちだったのでやめました。最終的に角部分はブラシを持ち替えて(パスを切って)また別のブラシで書き始めています。

例のカクッとした角を再現しようとしたが…別々のパスで書いた方がやりやすかった。

完成!利点は多い

アートブラシを使って作った全日本プロレス中継文字
初期に作ったもの。よく見ると同じ形のブラシが何度か出てきているが
現在はブラシ数を増やしてもっと巧妙に見えるように工夫している。

ブラシを変えるだけで自然な風合いに

一度形を作ってしまえば、あとは「止め」や「払い」など文字の印象を形づける部分だけ別のブラシに変えて、同じ「ス」でも全然違う形に仕上げることができます。ここが決められた形が連続する「フォント」とは違うところです。

全日本プロレス文字
同じ語の連続でも自然な手書き感が出せる

長体・平体への可変も簡単

全日本プロレス文字シャドームーン

普通にレタリングした文字やフォントの横幅を狭めようと(長体)すると全体的に細くなってしまい、さらにシアーが掛かった書体だとシアーの角度が変わってしまいます。しかし「アートブラシ」を使ったこのやり方だとそれらの問題を回避できるので、あらゆる文字数が混在したアートワークでもデザイン性を保持できるという利点があります。

アウトラインで書いたで書いたシャドームーン
普通に長体をかけたもの。細くなってシアーの角度も変わって不自然。
アートブラシで書いたシャドームーン
アートブラシを使ってパスのまま変形させたもの。シアーの調整は必要になってくるが太さは自然な形を残している。

あらゆるレタリング風文字に転用できる

他の昔っぽい文字なんかも要素だけ取り込んでアートブラシ化すると面白いかもしれません。また他にもっと良い方法があったら情報をお知らせただけると助かります。

全日本プロレス文字、書きます

こういう使い方がふさわしい。instagramにも少し作例を載せています。

自分で書くのが難しい時は

以上のような感じで書き方をまとめてみました。ただしブラシをセットした「だけ」では「全日本プロレス文字」は完成しません。抑揚や文字バランスなどオリジナルの持つ独特な雰囲気を完全に再現するにはレタリング的な技術が少なからず必要になってきます。当然Illustratorの扱いにもある程度の修練が必要です。

効果パスのオフセット
交点や深すぎるヒゲには「効果:パスのオフセット」を使ったフックでちゃんと丸みをつけてある。

オーダー受け付けています

弊社の「全日本プロレス中継(80年代)文字」は当時の趣をそのままに、既成のフォントでは味わえない独特の雰囲気を持つロゴ文字を作るサービスです。(※タイトル画像は「フォント」となっていますが、フォント化された商品ではありません)ご要望がございましたらぜひメッセージか下記リンクからお問い合わせいただけると幸いです。

同じフォントを並べただけの既製品とは少し趣の違う、流血の魔術のような風情ある文字に仕上げさせていただきます。

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